親が最も警戒すべき「小2・小3の壁」とは? 子どもの自己肯定感を守る5ポイント

中島輝

幼稚園・保育園からの小学校へ、どうスムーズに移行すればいいの? 毎年春になれば頭を悩ませるママ・パパが続出しますが、実は本当に子どもが傷つきやすいのは、子どもたちが初めて挫折を知る「小2,小3」だと言います。

見逃せない小2、小3の壁の詳細と、親が注意して見てあげてほしいポイント、そして思春期の入口となる10歳前後の子の自己肯定感の高め方を解説します。

※本書は『子どもの自己肯定感の教科書』(中島輝著、SBクリエイティブ刊)より一部抜粋編集したものです

自己肯定感の小2・小3の壁とは?

自己肯定感の最初のつまずきポイントがあるとすれば、小学校2、3年生のころではないでしょうか。子どもが小学校に入学したばかりのころは、はじめてのことがたくさんあります。

だからお子さんも親御さんも一生懸命とり組み、乗り切っていくことが多いのです。なかには「学校に行きたくない」というお子さんもいますが、むしろ悩みはシンプルです。

それが小学校2、3年生くらいになると、少し複雑化してきます。具体的にこの時期は、3つのポイントがあります。

小学校1年生と2年生で何が変わってくるのか?

1つは、コミュニケーションのとり方が複雑になってくること。

これまでは家庭では親と、学校では担任の先生や仲のいい友だちなどと、シンプルにコミュニケーションがとれれば意思疎通ができました。

そこから少しずつ小学校生活にも慣れ、学校では「○○委員会」「○○係」などの役割が決まりはじめたり、クラブ活動がはじまってきます。

また家庭によっては習いごとが増えたり、塾に通いだしたりする子もいるでしょう。小学校1年生までは、何かと世話を焼きがちだったお母さん、お父さんも、子どもに任せることが増えてきます。そのぶん、仕事に時間を割さくことができ、忙しくなる親御さんもいます。

たとえば、1年生のあいだは仕事帰りに学童保育にお迎えに行っていたお母さんがお迎えに行かなくなる、またときには、子どもだけで家で留守番をさせる機会も出てくるかもしれません。

子どものまわりのさまざまな環境の変化は、子どもにも少なからず影響を与えます。

別の見方をすると、この時期の子どもはコミュニケーションのとり方が下手になってくる、つまり子どもとコミュニケーションをとるのが難しくなってくる時期でもあります。少なくとも家庭では、お子さんと接する時間が短くなっても、肯定的なコミュニケーションのとり方をしてあげる必要があるでしょう。

学力の個性が出て、他の子どもと自分を比較する時期

2つ目のポイントは、学習面で個性の違いが出てくる時期だということ。

学校の授業では、小学校2年生から九九がはじまります。子どもによっては「国語は得意だけど算数はキライ」「算数は好きだけど、国語はまったくダメ」などの個性が出てきます。

お子さん自身が友だちと比べて「自分はダメなのかな」「できないのかな」とまわりを意識しはじめるのもこの時期。もちろん、お母さん、お父さんもわが子の学習面が気になりはじめ、ほかのお子さんと比較することが増えはじめます。

たとえばこの時期に「○○ちゃんはもう全部九九覚えたんだって」「もっと音読をちゃんとしないと、どんどん国語が苦手になるわよ」などと、ほかの子と比べたり、その子の悪いところにフォーカスするようなことをいってしまうと、子どもの自己肯定感は下がってしまいます。

性格の違いがはっきりとしてくる年齢

3つ目のポイントは、この時期に性格やパーソナリティが出てきやすいということです。

Aくんは社交的で活発であるとか、Bちゃんは内向的でおとなしい、Cくんは繊細、などといったような違いが出てくるのです。いじめのご相談がはじまるのもこの時期です。

ですからなるべくこの時期くらいから、その子の個性に合ったサポートをしてあげる必要があります。

たとえばこんなことがありました。ある教育者の講演会に出席した小学校2年生のDくんのお母さんが、「子どもには低学年のうちから武道を習わせるといい」と聞いたのです。武道を習わせると礼儀正しい子になるし、ハキハキと声が出せるようになるから、絶対におすすめだと。

日ごろから何ごとにも消極的だったDくんのことを心配していたお母さんはすぐに、息子に剣道を習わせることにしました。

でも、数回通っただけで子どもは行きたがらなくなりました。大きな声を出して竹刀をもって戦うのは嫌だというのです。泣く泣く剣道をやめさせましたが、3年生になるとDくんは自分から「学校のクラブ活動の吹すい奏そう楽がくをやりたい」といい出したのです。はじめて習う楽器で演奏するDくんはイキイキとしていました。

ここに来てようやくお母さんは、自分がDくんの個性を無視して、やりたいことも聞かずに習いごとを押しつけていたことに気がついたのです。

先ほども触れたように、さまざまな調査で、自己肯定感のターニングポイントが9〜12歳くらいであるという報告があります。

コミュニケーション、学習面、パーソナリティの違いによる個性が子どもの成長に深くかかわってくるこの時期。ぜひお子さんに寄り添い、サポートをしてあげましょう。

「こころの脳」は12歳までに大きく成長する

赤ちゃんの脳は未発達なまま生まれてきます。そして生まれてから1年ほどで脳は爆発的に発達していきます。これは大脳の神経細胞から出ている樹状突起が互いにつながりながら伸び、広がっていくためです。このつながりの部分をシナプスといい、情報を伝える働きをします。

赤ちゃんが刺激を受け、それに反応しながら新しいことを学んでいくと、シナプスはどんどん増え、樹状突起が伸び、脳が発達していきます。脳は3歳までに80パーセント、6歳までに90パーセント、12歳までに100パーセント完成するといわれています。

頭のよさとは、ただ単に学校の成績やテストの点数だけで判断できるものではありません。社会で必要とされる頭のよさは、「自分で問題を発見し、解決法を見つけて行動できる能力」です。

そのために、記憶力や集中力だけでなく、感受性、積極性、独創性、意思、運動力、注意力などあらゆる面でバランスがとれ、脳の前頭連合野(自分の意志で計画し、行動するなど人にとって重要な役割をもつ場所)がうまく働く状態が理想です。そして「こころの脳」においても12歳までの子育て期はとても大事な時期です。

いわゆる「社会の脳」ともいえる「こころの脳」の成長時期は、言語の発達がピークを迎え、語学力が総合的に伸びる時期。大人と変わらない話し方をするようになり、「生意気なことをいうようになった!」などと思うこともあるでしょう。相手によって言葉を使い分けることもできるようになります。

さらに、相手の表情を読みとる、必要なときにはがまんする、想像力を駆使して何かをつくり出すといった能力が伸びることで、コミュニケーション能力や集中力、想像力、自制心などが鍛えられます。さらに10歳前後の児童期は、幼児期に獲得した自主性を生かし、努力や工夫をすることができるようになる時期でもあります。

だんだん口数が少なくなる思春期の入り口ですが、難しいこの時期に自己肯定感をアップするポイントを5つ紹介します。

「難しい思春期の入り口」10歳前後の子育てで大切にしたい5つのポイント

①愛情を示すこと

10歳前後になると、愛情を示しづらくなる親御さんもいますが、子どもに愛情を示し、子どもと積極的にかかわり、感情や意見を尊重しましょう。

②コミュニケーションを重視すること

子どもの口数が減っても、会話の時間を増やすのが難しくても、子どもの感情や考えをよく聞き、理解しようとする姿勢が大切です。

③自己表現をうながすこと

子どもが自分の感情や意見を自由に表現できる環境を提供しましょう。家庭が子どもにとって「自己表現しても大丈夫」「安心して表現できる」場所であることがきほんです。絵画や音楽で表現するのもいいでしょう。

④自己管理のスキルを教えること

難しく聞こえますが、子どもが「これをしたらリラックスできる」「ストレスが軽減する(ご機嫌になる)」など、ストレスや感情をコントロールする方法をいくつかもっていると、こころが安定した子に育ちます。

あわせて、「優先順位のつけ方」「時間に余裕をもって行動する」「作業時間を決めて行う(ゲームは○時間、宿題は○時間など)」など時間管理の重要性も教えてあげましょう。

⑤社会的なつながりをうながすこと

家族や友だちはもちろん、友だちの親や地域の人、習いごとの先生やコーチなど、できるだけ人とかかわり、ほかの人と協力したり、助け合ったりする機会を与えましょう。適切な社交スキルが育まれます。

子どもの自己肯定感の教科書

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